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正常圧水頭症

正常圧水頭症とは

正常圧水頭症とは、脳脊髄液が頭蓋内に過剰に溜まり、歩きにくい・ふらつく(歩行障害)、物忘れ、失禁をきたす病気です。
「特発性(idiopathic)」とは「原因不明」という事であり、iNPHの病因は現在でも不明です。
多くのiNPHの患者様に、後述の「シャント術」が有効である事より、その病態に脳脊髄液の循環動態の異常が関与していると考えられています。

【特発性正常圧水頭症 (iNPH : idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus)とは】
関連リンク:inph.jp/

脳脊髄液の循環

脳脊髄液の循環

脳と脊髄は、硬膜という硬い膜の袋に包まれ、脳脊髄液(本当に水道水のような液体です)にプカプカ浮いているような状態で存在します。この髄液は、脳内の微小な血管より滲み出るように産生され、脳実質内や脳表を循環し、脳や脊髄を保護したり、老廃物を除去したりしています。その後、血管周囲や硬膜に存在する吸収システムより吸収され、静脈に入って行くと考えられています。

iNPHでは、何らかの影響にて脳脊髄液の循環・吸収が悪くなり、脳脊髄液が過剰に頭蓋内に溜まります。溜まった髄液は周囲の脳を圧迫し、歩行障害や認知機能の低下といった症状を出します。

iNPHの症状

3つの大きな症状があり、「三徴」とされています。

歩行障害

歩行障害

一つ目は歩行障害です。下記のような特徴的な歩き方を呈します。

  • 小刻み歩行(小股でヨチヨチ歩く)
  • 開脚歩行(足を開き気味に歩きます)
  • 不安定(特に方向転換や、椅子に座るなどの体位変換の時)
  • 転倒する。
  • 突進現象(うまく止まることができない)
  • 座った状態から立てない、立ちにくい。

認知機能の低下

認知機能の低下

2つ目は認知機能の低下です。

  • 意欲・自発性の低下。
  • 思考や行動面における緩慢さ。
  • 集中力の低下。
  • 趣味などをしなくなる。
  • 呼びかけに対して反応が悪くなる。
  • 1日中ボーっとしている。
  • 物忘れが次第に強くなる。

失禁

失禁

3つ目は失禁です。

  • 頻尿(トイレが非常に近くなる)
  • 尿意切迫(我慢できる時間が短くなる。)
  • 尿失禁(無意識に漏らしてしまう。間に合わなくて失禁してしまう。)

iNPHの検査

画像検査

主な所見は下記の通りです。

①脳室拡大
②シルビウス裂の開大
③高位円蓋部・正中部の脳溝・
くも膜下腔の狭小化。

正常例との比較

iNPH症例 正常例
矢状断(低位)矢状断
(低位)
矢状断(低位) iNPH症例 矢状断(低位) 正常例
矢状断(高位)矢状断
(高位)
矢状断(高位) iNPH症例 矢状断(高位) 正常例
冠状断(前方)冠状断
(前方)
冠状断(前方) iNPH症例 冠状断(前方) 正常例
冠状断(中央)冠状断
(中央)
冠状断(中央) iNPH症例 冠状断(中央) 正常例

髄液タップ試験

硬膜内の髄液が溜まったために調子が悪いのなら、「髄液を抜いてみよう」という検査です。
腰に痛み止め(局所麻酔)を打って、腰椎穿刺を行い、髄液を抜く検査です。20分前後の検査になります。
髄液を抜く試験にはいくつか種類がありますが、当院では「髄液を30ml 1回のみ排除する」方法を採用しています。
髄液を抜く前後で、歩行のスピード、記憶力・認知機能の検査を行います。各検査にて改善が得られた場合、「髄液を抜けば症状に改善が得られる可能性が高い」と考えられるので、水頭症シャント手術を行うことを検討します。

水頭症シャント手術

髄液タップ試験では、もちろんですが、髄液を抜いたあと、針も抜きます。その場合、当然ですが、再度髄液が溜まってきます。従って、排除後に症状に改善が得られたとしても、1〜2週間の経過にて症状が元に戻ってしまう人が多いです。
水頭症シャント手術とは、髄液腔と腹腔との間に「髄液の通り道」を造り、髄液を絶え間なく腹腔内に流す手術です。腹腔は水分を吸収する能力が非常に高く、「髄腔内で髄液の吸収が悪い分を、お腹(腹腔)で吸収してあげよう」という考えです。

水頭症シャント手術

全身麻酔にて1時間〜1時間30分ほどの手術になります。方法として、下記の2つが主です。いずれも「髄液腔」と「腹腔」に「髄液のバイパス(通り道)」を作る手術です。シリコン製の細い管腔を主に皮下に埋め込む(通す)手術です。
途中にシャントバルブを連結し、術後、圧調整器にて皮膚の上から髄液の流れを調整することができます。

A)脳室腹腔シャント術(VPS)
髄液腔として、脳室を選択。
B)腰椎腹腔シャント術(LPS)
髄液腔として、腰部脊柱管を選択。

合併症

主な合併症に、感染、シャント機能不全、髄液過剰流出による頭痛や硬膜下水腫・血腫などがあります。

シャント術後の改善

髄液シャント術後の症状の改善率(全手術例のうち改善が得られた症例の比率)は、歩行障害が最も高く(約70%)、次に認知障害(約60%)であり、排尿障害では約50%とされています。

シャント術後の改善

悩まずに、いつでもご相談ください

当院の医師(長谷川)は、埼玉石心会病院にてiNPHの治療を行なっております。当院にてiNPHが疑われた患者様に関しては、埼玉石心会病院にご紹介し、そのまま髄液タップ試験や必要により水頭症シャント手術を行っています(髄液タップ試験、手術ともに長谷川が引き続き担当します)。
「脳を触らなくて済む」という長所のことから、LPSを第一選択にしています。何らかの理由(腰椎の変形が強い、腰椎の手術歴など)にてLPSが困難な方には、VPSを行っています。

特に理由なく「最近歩きづらい」「物忘れが強くなった」などの症状が認められた場合、NPHの可能性もあり、治療により症状を緩和させられる可能性があります。悩まず、お気軽に当院にご相談ください。